鋼屋さんが「前サイトで古橋さんを絶賛してたらこういう話になった」みたいな、刊行の話だけでも物凄いエピソードを持つデモンベイン小説。本当に、世の中何が縁になるかはわからない。
読んで思った。
これが古橋さんクォリティだな、と。
鋼屋さんと古橋さん、相性いいなぁ。
以下、凄く長いです。
前三巻の感想付け加えての機神胎動レビュー。
斬魔大聖デモンベイン 機神胎動
先に書いておくことがある。
自分は、デモンベインの本編のラノベを持っているが、それはとてもじゃないが、満足のいくものではなかった。著者の涼風氏は前回の「ハローワールド」で結構叩かれてた記憶があるが、著者の力量以前に構成段階で間違えていたと思う。
単純に、媒介の違いである。
AVGというのは、ある意味もの凄い贅沢なものだ。
BGMや効果音、さらに読み進めるボタンを自分で押せることで物語を実感出来る特性を持つ。
もちろん、下手打ってドン引きさせるものもあるが。
残念ながら、本はそういったものはない。
故に、著者は話にテンポを持たせるために構成を考えなければならず、それがうまくいかなければ冗長で説明調な、嫌気な苦痛を伴う小説になってしまうのだ。
そして、本編のラノベのデモンベインは、典型的なその形だった。
もともと、デモンベイン自体が「描写を繰り返すことによって、キャラの癖みたいなものを組み立てるってのが好き(本人談)」な上、話自体もクトゥルーでループなアレ話で濃いから、そこらのバランスの取り方削り方を考えなければならなかったのだ。もう名台詞が薄い薄い。
なまじ人気があって3巻まで続いてしまったために、削り所とかキャラ立てとか大変だったのかもしれないけど・・・。
全ルートの結果のみカヴァーとかじゃなくて、最初っからアルルートで限定すればもう少し落ち着いたものが出来たのではないかと思う。インスマウスとかクトゥグア×イタクァのページモンスターはもっと大々的に取り扱っても良かったように思うがどうか。
さて、そういった問題点のあった本編のラノベだが、今回レビューの機神胎動では問題点が完全に解消されている。つまり、細かい説明端折ってバリバリのインチキクトゥルーものである。潔さが素晴らしい。
そしてこの外伝、本編のかなり前を舞台としている。
「アル・アジフ」は「大十字九郎」と出会っていなく、まだ「ブラックロッジ」も無い、しかし、確実に悪夢に蝕まれていく侵されていく世界。魔術結社ダークネス・ドーンと対立する当時のマスター・オブ・ネクロノミコン「アズラット」を中心にストーリーは回っていく。
もちろん本編に関わってくるワードも多くあるが、独立した物語として綺麗に丹念に作り上げられてる感じ。
キャラクターの描写も、シンプルかつ丁寧。
妻を魔術師に乗っ取られ復讐の積念に駆られるアズラット。九郎と出会う前の従順にして残酷性も持つアル。ただ独り、世界の大敵と戦い続ける覇道鋼造。落ち込んだり開き直ったりと、人間としての強さを見せる記者オーガスト・ダーレス。などなど。
それぞれ役割があり、それに固執する故に大きな成長などは無いが、心情の微動や慟哭などがジワリと染みるし熱い熱い。
正直デモンベイン楽しめて、これを読まないと損だと思う。
「答えろ覇道。俺の命は、どう使えばいい?」